0010バニラ=クライン、死す!?

明るい光を感じる。
どこかで鳥のさえずりが聞こえる。
少しだけ名残惜しかったが、枕を脇によけてベッドの上に起き上がる。
バニラ「ふわぁ…。」 ぼくは両手を大きく伸ばして、あくびをした。
かたわらに置いてあるメガネをかけた。

居間に移動する。
あかり取りから光。
窓ぎわに這いあがったつる性植物の葉を通して柔らかな光が降り注いでいて、家の中は朝の新鮮な光で満たされている。
oto2{ごりごりごり…} 棚からコーヒー豆をとりだし、ふるぼけたミルで削る。
豆を削っている手ごたえと、ミルからこぼれてくる香りは、朝が来たことを教えてくれる。

朝食を食べながら、今日の予定を思い出す。
今日は学院に届け物があったな。
チュニックと短パンを履き、その上に上着を羽織った。
足には膝上まで届くブーツをはく。
これがぼくの普段の出で立ちだ。
ぼくは、仕事部屋に向かった。

仕事部屋には、たくさんの器具や工具類、そして書類や本がひしめいている。
ぼくの仕事は一口には言いづらいけど、あえて言うなら、基本的には薬剤師さんだ。
魔法薬学の知識をもとに素材を加工して薬をつくり、商店や企業、公共施設などに売っている。
いちおう屋号はクラインズ・ファーマシーという。
でも、もともと器用貧乏な性格であるためか、いろんな人から、本当にさまざまな仕事を頼まれてしまう。
たとえば、魔道具の出力調整であったり、ページがひっついた魔導書の復元であったり。
獰猛なペット用の頑丈なベッド作りなんていう依頼もあった。
だから今となってはファーマシーとは名ばかりの、街の技術屋といったところだ。
仕事の幅が広いため、自然と仕事部屋にも道具が増えるし、ごみごみした空間になってしまう。

さて、ぼくは帳簿を取り出して今日の予定を確認した。
魔法学院からの依頼で、いくつかの試験薬品の納品だ。
あらかたは昨日の夜に準備していたが、途中で眠たくなったため、残った分は今日の朝やることにしていた。
まったく、昨日のぼくが恨めしい…。

調合が終わったとき、既に時刻は昼をまわっていた。
薬品を3個の瓶にふりわけ、カバンに入れる。
ぼくは家のとびらを開けた。
あたたかい日差しが顔にあたる。
空は完璧に晴れていた。
家から続く石畳を踏んで、柵まで歩く。
庭には雑草が小さな花をたくさん付けていた。

ぼくの家は、少し町中から離れたところにある。
学院へは、少し歩かなければならない。
ぼくの住む町、スカラヴィルはいわゆる学園都市で、ハイランディアという国の、比較的標高の低いところにある。
都市の特徴として、ほぼ全域がゆるやかな丘であり、その丘の一番上に魔法学院と呼ばれる魔法の研究施設がある。
その丘の頂上から広がるように、商店や飲食店を中心とした街が坂の上に伸びている。
なぜここに学院が来たのかというと、もともとは閑静な田舎の山の上で、静かに学業に専念しようということだったらしい。
しかし、学院には魔術師が集まるもの。
そして、人が集まるところには自然と市が立ち、人が住み、街ができる。
そうしてできたのがこのスカラヴィルだ。

ぼくは、学園に向けて坂を上り始めた。
坂は行き交う人たちでとてもにぎやかだ。
見知った顔が多く、挨拶をしてすれ違っていく。
坂の途中の広くなったところで子供たちが遊んでいるのが見えた。
魔法で石を浮かせ、空中で相手の石とぶつけ合う遊びだ。
住宅の上の方では、恰幅の良いおばさんが、洗濯物をしまっている。
彼女がタクトを降ると、洗濯物は手も触れないのにひとりでにかごに飛び込んでいく。
魔法使いの街というだけあって、この街には生活の中にも深く魔法が行き届いている。

坂の頂上には、大きな石造りの門があった。
城壁のように強固な、高い石の壁に開いた穴だ。
重要な魔法の品々を守るため、自然とこのような壁が建てられた。
門番に挨拶をすると、すぐに快く入れてくれた。
以前、ぼくはこの魔法学院に籍を置いていたことがあった。
ある事故がきっかけでぼくは魔法学院から出ることになったけど、今でもぼくのことを覚えていて、信頼してくれている。

薬品保管庫に入ると、棚のラベルにあったところに薬瓶を3つならべて置く。
これだけで今日の仕事は終わりだ。
あとは家で読書でもするか、それとも…。
そう思っていると、薬品保管庫の扉を出たところで、ふいにうしろから聞き覚えのある声が聞こえた。 ローズ「配達ご苦労。」 振り返ると、女の子が微笑みながらこっちを見ていた。
はねっ毛をショートボブに整えて、かわいらしい花の髪飾りをしている。
上品な服装の上に魔法学院のマントを身にまとっていて、黙っていれば「良家のお嬢さん」といった雰囲気だ。
彼女はぼくの幼馴染の、ローズだ。
明るく人懐っこい性格で、誰とでもすぐに仲良くなってしまうのが彼女の特技だ。
少しおてんばなのが玉にキズだけど・・・。
家が近所だということもあり、いちばんの親友だ。
小さいころはどこに行くにも一緒で、もはや姉弟といってもいいくらいの間柄かもしれない。
カバンを持っているところを見ると、今日の研究は終わったのだろうか。

バニラ「やあ、いまから帰り?。」 ローズ「ううん。研究に使う材料がなくなっちゃってね。青水晶。今から外に取りに行くのよ。」 バニラ「わざわざ採取に? お店で買ったら?。」 ローズ「そうできれば苦労しないわよ! 研究費が残り少なくてさ。」 研究者も予算がないのか。
どこも大変なんだなぁ。
青水晶は魔法結晶のなかでも産出量が少なく、需要も高いためお店で買うと確かに高価だ。

ローズ「あんたこのあと、ヒマ? 水晶洞まで付き合いなさいよ。」 バニラ「えー!。」 確かにこのあとはヒマだけど、せっかく仕事が終わったんだから、家で昼寝でもしたいのが人情だろう?
ローズ「えーじゃない! 親友が困っているんだから手伝いなさいよ!。」 バニラ「うーん…ふゎい…。」 ローズ「返事が小さい!。」 バニラ「ハイ!。」 ローズ「よし!。」 ほぼ強制的に行くことになった。

水晶洞は少し離れたところにある。
徒歩で行けば早足でも2時間はかかるだろう。
でも、今は彼女と一緒だから大丈夫だ。
目的地まで文字通り、ひとっ飛びだ。
彼女は、掃除用具入れからほうきを取り出した。
そしてかばんからロッドを取り出すと、それを軽やかに振る。
oto1{ぶぅぅん…} ロッドの先がぼんやりと光る。

倉庫から年季の入った感じのソファが飛び出してきた。
ローズの魔法に引っ張られたんだ。
彼女は手に取ったほうきで軽く座面をはたいて埃を落とすと、用のなくなったほうきをポイ、と投げ捨てた。
バニラ「ほうきで飛ぶんじゃないのか。」 ローズ「だっておしりが痛いのはイヤでしょ?ちょっと古いソファだけど、我慢してよね。」 ローズが先に腰を掛けると、隣の席をポンポンとたたいてぼくを急かした。
ぼくたち2人が腰掛けると、ソファはゆっくりと宙に浮き、そのまま上空へ滑り始めた。

ソファは横向きに、ローズのほうを前にして上空を飛び続ける。
一般的な魔法使いはほうきにのって飛ぶことが多いが、優秀な魔女である彼女は、乗り心地の良い椅子をよく使う。
今日はぼくも載せる必要があるから、二人乗りのソファだ。
1人ずつ乗ればいいって?それは無理だ。
何せぼくは、まったく魔法をつかうことができないからだ。

昔のことが頭によぎる。
魔法学院での事故の後、大けがをしたぼくは、辛くも一命を取り留めた。
けど、その代わりに一切の魔法を使えない体になってしまった。
だから、ほうきに乗ることもできないし、コーヒーミルも手動で回さなければならない。
ぼくはネガティブな考えを打ち切るため、ローズのほうに顔を向けた。
ローズは視線に気づくと、ぼくの目をまっすぐ見つめて、笑った。 ローズ「ありがと。手伝ってくれて。」 バニラ「親友の頼みだからね。」 君の圧もすごかったからね…とはさすがに言えなかった。
彼女はフフッと笑った。
二人でお菓子を食べたりしながら、短時間のフライトを楽しんだ。
ソファはびゅんびゅん風を切り、森や山を越え、一直線に目的地へ向かった。


ローズ「ねえ、あった?。」 バニラ「ない…。」 さっきから同じやり取りばかりをしている。
洞窟に入ってかれこれ1時間くらい探しているけど、目的のものは全く見つからない。
ずっと下ばかり見ているから、腰と首が痛くなってきた。
出てくるのは、価値のないクズ水晶やコウモリのフンばかりだ。
もっとも、コウモリのフンは良質な肥料になるので、ぼくは喜んでビンにつめていたけど。
ローズ「それにしてもウンコを集めるなんて変わってるわね。」 バニラ「コウモリは夜になると洞窟を出て、外でたくさん虫を食べるだろ? だから、フンにはたくさん栄養があるんだ。」 ローズ「栄養って…! もしかしてアンタ、それを食べる気!? そーゆー趣味なの!?。」 バニラ「ち、ちがうって! 栄養があるから、いい肥料になるってこと!。」 ローズ「びっくりさせないでよ! 一瞬、友達やめようかと思ったわ!。」 …単純な作業だから、どーでもいい話にどーでもいい花が咲く。

バニラ「この辺は取り尽くされちゃったのかも?。」 青水晶は魔法の触媒や魔道具の芯材として幅広く利用価値がある素材だ。
その有用性に反してめったに見つからないため、価格も高い。
そのため、採掘場所が見つかるとすぐに素材ハンターに取り尽くされてしまう。
自力で見つけようとするならば、取りこぼしを狙うか、ハンターでも入りにくいところで探すしかない。
バニラ「ふーっ、ちょっと休憩しようよ。」 ローズ「そうね。このままじゃあ、おばあちゃんみたいに腰が曲がりそうだわ。」

oto1{ボワン} ローズがロッドをふると、何もない空間から敷物とティーセットが現れた。
さらに、小さな光の玉が現れてあたりを照らす。
敷物の上に二人並んで座った。
ローズがぼくの頭に顔を近づける。
ポニーテールに顔をうずめ、すーっと息を吸い込んでいる。
ローズ「ちょっと汗をかいてるわね…。」 その目はトロンと半開きになり、見るからにヤバそうになっている。
バニラ「恥ずかしいからやめてよ。」 ローズ「いいでしょ? 今は私たちしかいないんだもん。ちょっとくらい嗅がせてよ。」

また始まった。
ローズはぼくのにおいをかぐ癖がある。
とくに人目がないときは見境がなくなってしまう。
顔を頭から耳の後ろ、首すじへと動かして順ににおいを楽しんでいる。
ローズ「アンタのにおいで一番好きなところ、教えてあげようか。」 ローズは嫌な感じでニィッと笑った。 バニラ「わっ。」 ローズがぼくの体をぐいっと引き倒した。
ぼくの来ているチュニックをめくり、お腹を丸出しにする。
彼女はぼくの体に覆いかぶさり、お腹に顔をうずめだした。
へそのうえに鼻をあてて、繰り返し頬をこすりつける。
ローズ「えへへ…。」 まるでマタタビをなめたネコだ。
ローズは崩れるような笑顔だ。
そんな顔をされたら、怒れないじゃないか。
ローズ「疲れてるときはアンタをキメるのが一番ね。」 バニラ「人をやばいクスリみたいに言うのやめてくれる?。」 そんなこんなをしながら、ぼくたちはひと時の休憩を楽しんだ。 ローズ「休憩のあとは、もっと奥に行ってみよっか。この辺じゃあいくら探しても時間の無駄だわ。」 バニラ「そうだね。」 ぼくたちは、暗い口を開けている洞窟の奥へと進んでいった。


ローズ「あった!。」 嬉しそうなローズの声が、洞窟に反響した。
地面に座り込んだ彼女の足元には、確かに小さな青水晶が生えている。
バニラ「ほんとだ! やったじゃん!。」 ぼくは嬉しくなって彼女に駆け寄った。
ローズは青水晶に両手をかけ、強く引っ張った
ローズ「うーん、びくともしないわ。」 地面に固くくっついているらしい。
ローズ「ふんっ!。」 oto1{ドスッ} ローズはロッドを青水晶の根元に突き刺し、てこの要領でおもいっきり引き始めた。
バニラ「ちょっとちょっと!。」 大切な魔法の杖を棒きれがわりにする魔法使いなんて、いる!?
残念ながら、一人だけいる。
ローズの素行をみていればこんなのは日常茶飯事だ。
ロッドを投げて木の実を落としたり。
ロッドでボールを打ち返してみたり。
だから、彼女のロッドは特別製だ。
メチャカタイトという頑丈な金属を使っていて、並大抵のことでは折れない。
oto1{パキ} ついに根負けしたのか、小気味いい音がして青水晶が抜けた。
ぼくたちは、笑顔で見つめあった。
その時。

oto1{ピシ。メキ} なにかが割れるような、大きな音がした。
バニラ「何の音?。」 嫌な予感がした。
さきほどローズが青水晶を引っこ抜いた場所。
そこには小さな穴が開いているが、穴から上に向かって30センチほどのひび割れが走っているのだ。
ひび割れは不気味な音を立てながらどんどん上に伸びていく。
ぼくとローズは、上を見た。
ローズ「あれって…。」 ぼくたちの真上には3メートルはあるだろう、巨大な水晶が逆さ向きに生えている。
水晶はよく手入れされた剣のようにとがり、光っている。
いやな予感がする…。
oto1{バキッ!} 音とともに、その巨大な水晶が大きく傾いた。
バニラ「あぶない!。」 ぼくは反射的にローズを突き飛ばした。
oto3{ドォォォォン} 洞窟内に大きな音が響き、あたりは砂埃におおわれた。

水晶が落ちた振動は洞窟内を駆け巡り、それに触発されて天井に生えていた小さな水晶が雨のように降ってくる。
手や背中に小石くらいの物体が落ちてくるのを感じる。
ぼくはうつぶせに倒れていた。
きっとあの水晶が落ちてきた衝撃で転んでしまったのだろう。
顔を少し起こす。
少し先にローズがへたり込んでいるのが見えた。
降ってきた小さい水晶で腕に小さな切り傷をしているが、大したことはなさそうだ。 ひとまず安心した。
バニラ「大丈夫?。」 ぼくはローズに声をかけた。
ローズは気を確かにするために顔をふると、こちらを見た。
と、その表情が一瞬で凍ったようにひきつる。
ローズ「バニラ…あんた、足が…。」 ぼくはうつぶせのまま体をひねって、うしろを振り返った。

ぼくの下半身が無かった。

腰のあたりの地面には、さっき天井にあった巨大な水晶が刺さっている。
水晶のとがった辺がぼくの腰にささり、ギロチンのように体を切断してしまったようだった。
腰の切断面からは心拍に合わせて大量の血が吹き出ていて、内臓や背骨が飛び出している。
ぼくの下半身は、水晶が落ちてきた衝撃で吹き飛ばされたらしく、3メートルくらい離れたところにうつぶせに転がっていた。

ローズがぼくの元までかけよってきて、抱き起こしてくれた。
その目からは涙が流れている。
断面から零れ落ちている内臓をかき集め、これ以上血が流れないように必死に傷口をおさえてくれている。
その手は既に血まみれだ。
バニラ「はは。足がなくなっちゃった。とにかく君が無事で良かった。」 ぼくは口から一緒に血の泡を吹きながら、軽口をたたいた。
ローズ「ばかっ! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!
バニラが…! 私のせいで…!。」 バニラ「ガボ、ゴホ…ッ…。落ち着いて、大丈夫だから。
ぼくのカバンを取ってくれるかな?足が無いからうまく動けないんだ。」

ローズは優しくぼくを地面に横たえると、落ちていたぼくのカバンを拾ってくれた。
ごそごそ。
ぼくはカバンの中を漁ると、星型のケースを取り出した。
中にはいろんな色のグミがいくつか入っている。
ケースからグミを取り出して口に入れ、飲み込んだ。
変化はすぐに訪れた。

ぼくの破けたお腹から飛び出してぺちゃんこになっていた内臓が、立体感を取り戻し、つぎつぎに折りたたまると、お腹に収まっていた時の形に戻った。
地面に流れ出た血は、逆再生のように傷口から体の中に入っていく。
そして離れたところにあったぼくの下半身もモゾモゾと動き出す。
下半身は、倒れている状態から足を振り上げると、勢いをつけて起き上がり、2本の足で立ち上がった。
そのまま、左右の足を交互に出してこちらに歩いてくる。
ローズは驚きのあまり、目を大きく開いたまま口をぱくぱくさせ、下半身が近づいてくるのを凝視している。
ローズ「なに…!? これ…。」 バニラ「あれ? 君にはまだ言ってなかった?。」 ぼくは、到着した下半身と、上半身の切断面を合わせる。
oto1{ぶじゅる。} 両方の断面から筋繊維が伸びてきて飛び出てきて絡み合い、切断された筋肉が元通り繋がった。
破れていた皮膚もすぐに再生して、綺麗な肌になる。
ローズは泣き顔のまま口を開けて、ぽかんとしている。
バニラ「また崩落があるとマズイ。とにかく今は早く洞窟から出ようよ。」


ぼくたちはソファに乗って、すでに帰路についていた。
すでに日は沈みかけていて、空は紺色とオレンジ色のグラデーションだ。
ローズ「もう! 本当に死んじゃったかと思ったんだから! ちゃんと説明しなさいよね!。」 ローズはまだ少しべそをかきながら怒った。
バニラ「ははは。親友の君には話していたと思ったんだけど、逆に話してなかったみたいだ。」 バニラ「魔法学院のあの事故は覚えてるよね。あの事故以来、ぼくは魔法が全く使えなくなっちゃった。それは知ってるね?。」 ローズ「うん。」 バニラ「それからちょっと経って、もうひとつの体の変化にも気づいたんだ。
ぼくの体は、どうも魔法薬が他の人よりもメチャクチャ効きやすくなったみたいなんだ。」 ローズ「どういうこと?。」 バニラ「たとえば、さっきのグミ。
あれは小さなケガをしたときなんかに飲む安い傷薬を、持ち運びやすいようにゼラチンで固めたやつ。
ぼくがこの薬を飲むと、死んでしまうような大けがでもそっこーで直すことができる。」 バニラ「さっき見ただろ?あんなかんじで体がバラバラになってもくっつくんだ。
だから大丈夫、もう平気。」 ローズ「…何よ。本当に死んじゃったと思ったんだから。
今度からは、大事なことは一番最初に私に教えなさいよね! …もう!。」 バニラ「わかったよ、そう怒らないで。悪いことばかりでもなかったじゃん?。」 ぼくはソファの端に乗っている、大きな袋をぽんぽんとたたいた。
oto1{じゃらじゃら} 音が鳴った。
この袋の中は、全て青水晶だ。
天井から降り注いだ水晶には、多くの青水晶が含まれていた。
恐らく、引っこ抜いた青水晶は、青水晶の鉱脈の要石だったのだろう。
ローズはやっと少し機嫌が直ったらしく、ぼくを見てフフッと笑った。
ぼくたちを乗せて、ソファは夕暮れの空を魔法学院へと飛んだ。

<おしまい>